論評:Dokibird (ドキバード) の大躍進を、私たちは見逃してはならない
2024年のVTuber業界において、特に躍進したタレント。その1人に、個人タレントのDokibird (ドキバード) さんが挙げられる。彼女の今年の活躍は、VTuber業界を変えたと言っても過言ではないからだ。
逆境からの再始動
Dokibirdさんは2月、異なるキャラクターで所属していたバーチャルライバーグループを契約解除された。運営会社は彼女がいかに契約違反の問題を起こしていたのかを書面だけにとどまらず、他のタレントにも明言させたり、業績に与える影響はきわめて軽微であるとする声明までも公開した。これらを信じるのなら、Dokibirdさんは同社に多大な損害を与えた良からぬ人物であると受け止められるだろう。
しかし、海外のコミュニティはDokibirdさんを全面的に支持し、会社側を「ブラック企業」であると断じた。彼女が本グループ所属タレントであった頃の多大な活動への評価とともに、会社側発表の矛盾点をいち早く検証し、会社とグループを業界史上稀にみる猛烈な「ブラック企業」批判の渦中に置いた。一部海外企業も同社との取引を打ち切ると発表した。グループは所属タレントの合計チャンネル登録者数を200万人以上失い、株価は暴落、社長が謝罪動画を公開する事態となった。
この一連の出来事は、2024年を代表するトピックの1つとなった。
結果、同社およびグループは、海外における売上を大きく減らし、復調はきわめて厳しい状況どころか、事実上海外事業を失いつつあるほどの危機にある。そしてそれとはまったく逆に、個人のVTuberタレントに戻ったDokibirdさんは、再始動し、大躍進を遂げていくことになる。
個人タレント復帰後の大躍進
Dokibirdさんは今年、数多くの事務所所属タレントや個人タレント、企業とのコラボレーションやゲーム大会、各種コンベンション参加を精力的にこなした。それは「契約違反を起こした不届き者」として上記企業を追放された身のそれではなかった。それは彼女のこれまでの活動や実績、人柄や姿勢が、多くの人や企業の信頼を得るものであったことの証左であるといえるだろう。
なお、彼女の公式YouTubeチャンネル登録者数は、12月12日に80万人を突破。今年特に顕著な伸びを示したVTuberタレントとなった。
12月14日には、ミント・ファントーム (Mint Fantôme) さんとのライブイベント「Fantôme Thief’s Revenge」を開催。ミント・ファントームさんもまた、異なるキャラクターで上記企業に所属していたことがあり、Dokibirdさんとは親密な関係にある。彼女もまた今年躍進したタレントであることから、この年の瀬の共演は両者の今年の躍進を象徴するシーンであったといえよう。多くのドラグーン (Dragoon / Dokibirdさんのファン) が、彼女に声援を送った。
業界を変えた
今年、Dokibirdさんが成し遂げたことは、決して海の向こうの局所的出来事ではない。
確固たる証拠と検証により、何処に責任があるのかのプロセス作りが進んだことで、上記企業のように問題あるとされた対象がメインストリームから退場させられた。さらに、根拠や情報源を伴わない憶測・誹謗中傷を許容しないコミュニティ構築の機運は、11月下旬にホロライブプロダクションに訪れた変化をめぐり、ファンが冷静に動いたことにも少なからず影響を及ぼしたのではないか。
VTuber業界のグローバル化は著しく、今後ますます1つのものとして発展を遂げていくことは確実だ。そして今年、彼女は明らかにVTuber業界全体に大きな影響を与え、それを変えた。
その波は、2025年にはさらに大きなものになるだろう。