論評:海外の有力個人VTuberが次々連携 近い将来一大勢力になるか
2024年より、海外の有力個人VTuberタレント同士が頻繁なコラボレーションやライブ出演などで連携を強める場面が目立ってきている。こうした個人タレント発の動きは、海外発の大きなムーブメントとして日本を含む世界中に影響を及ぼす可能性がある。

ミント・ファントーム (Mint Fantôme) さん
ドゥービー (Dooby) さん
Nimi Nightmare (ニミ・ナイトメア) さん
Dokibirdの大躍進きっかけか
これまでのVTuber業界では、日本発の動きが大きな影響を与えてきた。業界最大手のホロライブプロダクションをはじめとする有力プレーヤーの多くは日本発であり、日本からの動きが世界のVTuber業界を牽引する方向へと作用するのは自然でもあった。
しかし、今日では逆に海外での動きが日本国内に影響を及ぼすことも珍しくなくなってきている。
2024年を代表するトピックの1つには、北米発の個人タレント「Dokibird (ドキバード)」さんの大躍進が挙げられる。彼女は同年2月、異なるキャラクターで所属していたバーチャルライバーグループを不本意な形で契約解除されたが、海外のコミュニティは彼女を全面的に支持し、一部海外企業も彼女を支援した。結果、2024年は彼女の年となり、業界全体をも変えていくことになった。
Dokibirdさんの大躍進は、世界中のVTuberファンや関連企業に注目された。彼女の活躍は多くの人々の勇気を呼び覚ました。勿論、それは日本でも例外ではない。彼女が所属していたバーチャルライバーグループおよび運営会社には、今日も一層の厳しい視線が注がれ続けている。
これから事務所所属のVTuberを志して企業の門を叩く者や、個人での活動を志す者にとっても、彼女の活躍は1つの道標になったといえよう。
そして、一部企業への不信感とともに、本当にタレントのことを考えている企業や事務所を見定めようとする者が増えた。Dokibirdさんの大躍進によって、企業や事務所に所属しない個人タレントでもここまでやれるんだという勇気が、VTuber業界全体にもたらされたのである。
有力個人タレントが次々デビュー・連携
Dokibirdさんの大躍進以降、彼女と親交の深いミント・ファントーム (Mint Fantôme) さんがモデルをリニューアルするなど本格的に活動のギアを上げ、新人タレントのドゥービー (Dooby) さんが両者のライブやコラボに出演。2025年に入ってからはLemonLeafさんがNimi Nightmare (ニミ・ナイトメア) さんへと再デビューを果たし、ミント・ファントームさんとの交流が見られるなどしている。
彼らに共通するのは、全員が高い人気とチャンネル登録者数を保有する個人タレントであるという点だ。これまでの彼らのキャリアを詮索することなどは不要だが、Dokibirdさんと同じく様々な環境で揉まれ、経験を得てきたのかもしれない。それは彼らが新人タレントとは思えないほどの配信力や企画力、技術力を備えた天才揃いであることからうかがえるものだ。
こうした近年の有力個人タレントのデビューおよび連携が、Dokibirdさんに影響されてのものであるかは定かではないが、様々な環境で経験を積み、新たな一歩を踏み出すタレントがこれほど相次いだことは、決して偶然ではないように思える。
近い将来「一大勢力」になるか
VTuber業界では長らく、「事務所」型 (企業などの事務所に所属し、マネジメントを受けながら活動する) がセオリーとされてきた。
しかし、それは能力ある人がより柔軟な活動を目指す際には最良でないこともある。事務所所属タレントとして活動を続けるアドバンテージがあるにもかかわらず、方向性の違いなどで離れる選択をする人が珍しくないのも、そこに理由があるものと思われる。
それは元々独立指向が強い海外に限らず、日本でも能力ある人がより思い通りの活動を目指す上で、事務所所属ではなく個人タレントを選ぶ道が評価されるようになってきた。VTuber黎明期から存在した「個人勢」という言葉が、今日までも無くならずにきているのは、個人タレントならでは、個人タレントだからこその優位性が確かに存在し続けたからなのである。
2024年のDokibirdさんの大躍進は、多くの人々に勇気と感動を与え、個人タレントがVTuber業界全体を変えることができるというムーブメントを巻き起こした。そして今年は、ますます多くの個人タレントが活躍し、より広い方面へと連携していくことになるだろう。
彼らは近い将来、企業による事務所と並び、VTuber業界をさらに変えていく一大勢力になるのかもしれない。